2023年に30周年を迎えた「機動戦士Vガンダム」
富野監督の「このDVDは見られたものではないので買ってはいけません」発言や、鬱アニメのネタとして扱われる事が多い本作でしたが、各メディアでVガンダムの制作スタッフが当時を回顧する機会が増え、再評価が始まっています。
このブログでは、Vガンダムに登場するメカ・キャラクターの演出方法や制作当時のエピソードについて解説します。
過去にVガンを観たことのある方も、改めて振り返ってみると新たな魅力を発見できます。
第4話「戦いは誰のために」
シャクティは、ウッソが白いモビルスーツ「Vガンダム」に乗り込むことになった経緯を回想してきました。今回はいよいよ第1話「白いモビルスーツ」に帰結する最後のエピソードです。
放送日・スタッフ(敬称略)
- 放送日:1993年4月23日
- 脚本:神戸一彦
- 絵コンテ:斧谷稔
- 演出:西森章
- 作画監督:西村誠芳
あらすじ
オイ・ニュング伯爵率いるリガ・ミリティアのカミオン隊は、ベスパの攻撃に備えてカサレリアの森に罠を仕掛けていた。カサレリアの森が戦場になることに戸惑うシャクティ。伯爵たちは修理に必要なコンピューターチップスを求めて、ウッソの家を訪れる。そこには、旧世紀時代のコンピューターバンクやMSシミュレーターがあり、伯爵たちはウッソがMSを操縦できた理由を知り感心する。ラゲーン基地に帰投したクロノクルは、シャッコー奪還のためサバト少尉の指揮下に入る。カサレリアの森を調査していたサバト隊は、カミオン隊と交戦状態に入る。シャッコーで迎撃に出たウッソは、罠が仕掛けられた森の中でサバト少尉と対決する。危機一髪の末に勝利したウッソは、自らの手で人の命を奪ってしまう。
キャラクターについて
ウッソ・エヴィンはなぜMSを操縦できるのか?
ウッソは、地球の不法居住者でありながら、メカやMSなどあらゆる分野について博識です。ウッソは、どこで知識を身につけたのでしょうか?
その理由は、ウッソの家にありました。
貴重な電子部品を保有している
オイ・ニュング伯爵が率いるカミオン隊は、コアファイターの修理が終わるまで、ベスパの攻撃に備えて準備をしていました。
伯爵たちは、コンピュータチップスを探しに、ウッソの家へ向かいます。
ウッソの家には、様々な電子部品が保管されています。
「なんでこんなものがあるんだ」と、ロメロ爺さんが驚くほどです。
これらは、ウッソの父(ハンゲルグ・エヴィン)が収集したものです。
これらの電子部品を使って、ウッソは後述するコンピューターバンクやワッパなど、生活必需品のメンテナンスができるスキルを持っていると考えられます。
旧世紀時代のコンピューターバンク
ウッソの家の地下には、旧世紀時代のコンピューターバンクがあります。この存在がきっかけで、ウッソの両親はここを住処とすることを決めました。旧世紀の代物ですが、ウッソの父(ハンゲルグ・エヴィン)によって復旧されました。ウッソは、コンピューターバンクのデータベースから、一般教養を学んだのです。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
MS初期のシミュレーター
ウッソの家には、MS(モビルスーツ)のシミュレーターまであります。シミュレーターに映し出されている映像には、北アメリカの海岸が写っています。
筐体には「BANDAI」の文字があります。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
このように、ウッソは電子部品を使って機器のメンテナンスを行えるだけでなく、膨大なデータベースから知識を学び、MSシミュレーターでモビルスーツの操縦もできる、恵まれた環境にいることがわかります。
ウッソ・エヴィン13歳、青春、してます
ウッソは、片思いのカテジナと恋に邁進中です!
劇中のAパートでは、ウッソとカテジナの恋の駆け引きが描かれています。
ウッソの家の地下にある旧世紀時代のコンピューターバンク。旧世紀のものが現在も使えることや、それを図書館代わりにして勉強していたことに感心するカテジナ。
カテジナに褒められて照れるウッソ。
ウッソの家を出た一行は、カミオンに向かいます。
ワッパに乗るウッソ。
歩くカテジナ。
ワッパに乗らないかと誘うウッソ。
断るカテジナ。
照れるウッソ。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
今までは、メールでやり取りをしていた憧れのカテジナと、自然に会話をしている。ふたりの距離が近くなっていることに、ウッソは天にも登る気持ちでしょう。
ウッソにとっての「戦いは誰のためなのか」
それは、カテジナのためなのです。
この想いは、思わぬ形でシャクティに困惑させます。
サバトとの激闘、そしてウッソは初めて人の命を奪う
ベスパのイエロージャケット「サバト隊」の攻撃を受け、ウッソはシャッコーで迎撃に出ます。
ウッソは劣勢を補うために、カミオンに積んでいたガトリングガンを持ち出し、火力を強化して応戦します。
「銃身が固定しないから当てられない!」
空中戦でのガトリングガンの使用は有効な手段とはならず、サバトの猛攻に対して次第に劣勢となったウッソは森の中へ入ります。そこには、ウッソたちが用意した罠が仕掛けられていました。
仕掛けは、森に張り巡らされたワイヤーに、ビームライフルやバスーカなどの火器を結びつけ、ワイヤーに引っかかると引き金が引かれて狙撃する仕組みです。
仕掛けからの攻撃により、シャッコーも被弾します。仕掛けた側のウッソも被弾する危険があるのです。
ウッソを追い込もうとするサバトも、仕掛けによって被弾。双方が油断できない緊迫感が高まる演出です。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
「シャッコーのショルダーにもなにかあったはずだ」
ウッソは武器を失い、劣勢に陥りながらも、ここでも冷静な判断でシャッコーの武装(ショルダーガン)を確認します。これが勝利の鍵となるのです。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
サバトのビームサーベルの一閃に対して、シャッコーのショルダーガンで応戦。ビームサーベルを持つゾロの左腕を破壊します。
咄嗟にウッソは、シャッコーのビームサーベルで、サバト機のコクピットを貫きます。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
ウッソの脳裏に聞こえたサバトの断末魔。
「爆発はしなかったけど…。爆発はしなかったけど。何だ…。何が聞こえたんだ。」
冷静に状況を分析しようとしますが、激しく動揺します。
ウッソは初めて、自分の手で人の命を奪ってしまいます。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
「ウッソ。何してるの。死んじゃいやよ。」
シャクティも現実を受け止められず動揺します。泣き喚くカルルマン。
千住明氏の劇伴「沈黙」と重なって、二人の慟哭を生々しく表現しています。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
すっかり戦意を喪失したウッソ。
「まだ…。助けてよ母さん。」「父さん、母さん。」
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
自分を狙う敵(クロノクル)がいることに戦慄し、父母に助けを求めます。
そして物語は、第1話「白いモビルスーツ」の冒頭へ続く…。
ウッソの撃墜数は?
ウッソが劇中で敵機を撃墜した数をカウントします。
撃墜としてカウントする定義は、戦闘不能状態(もしくは撤退)になったもの。小破・中破にかかわらずカウントします。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
ウッソの撃墜数
- 2機(ゾロ:3番機(タミー機?)・ゾロ:サバト機)
- シリーズ累計 6機
シャクティ・カリンが感じた異常3選
このエピソードでは、一般的な倫理観を持つ(いわゆる「ふつうの人」)シャクティが、数々の非常識を目の当たりにして困惑する様子が印象的に描かれます。
Vガンダムの作風の特徴である「異常さ」が色濃く表れています。
カテジナ・ルースの育児放棄
カルルマンにミルクをあげながら、シャクティはつぶやく。
「カテジナ・ルースさんって赤ちゃん嫌いなのにね。」
ウーイッグの空襲で孤児となったカルルマンの面倒を見ているのはシャクティです。
カルルマンを助けたカテジナは、いつの間にかカルルマンの面倒をみることをやめてしまっています。
食事や洗濯、お守り、育児に関することは、既にカテジナよりも年下のシャクティが担当しています。
カルルマンを背負ったシャクティが、ウッソとカテジナをワッパで追い越したときも、二人がシャクティを気遣う様子は見られません。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
カミオン隊に同行することを拒み、カサレリアに残る意思を伝えるシャクティ。カミオンの車内から見送るカテジナは無言のままで、カルルマンのことを口にすることはありませんでした。
リガ・ミリティアの大人たちが、カルルマンの世話をしている描写はありません。レジスタンス活動をしている立場上、託児所のような仕事は関わらないのかもしれませんが、年端もいかないシャクティに育児を押し付けるのは異常です。ウッソの仲間たちや、後に登場するハイランドの子供たちが、率先してカルルマンの面倒を見る場面からも、「Vガンダム」の大人たちの異常さを物語っています。
オデロとロメロ爺さんの無謀な行為
マーベットのコアファイターを援護するため、オデロとロメロ爺さんは森の中を逃走中のカミオンのクレーンにしがみついて、ハンガーを覆っているホロを外そうとします。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
オデロとロメロ爺さんの軽妙なやりとりが面白い。
カミオンは森の中を逃走中。カミオンのクレーンの操作方法によっては、木に衝突する危険があります。
逃避するカミオンの後ろからワッパで並走するシャクティは、命綱なしでクレーンにしがみつく二人を見ていました。
「この人たち、みんなおかしいわ。」
「Vガンダム」ならではの名台詞です。
オデロもロメロ爺さんも生きるために必死ですが、シャクティから見れば異常そのものです。
ウッソの狂気
コアファイターの修理が終わるまでカサレリアを動けないカミオン隊は、潜伏している森に罠を仕掛けることにしました。
仕掛けは、森に張り巡らされたワイヤーにビームライフルやバスーカなどの火器を結びつけ、ワイヤーに引っかけると引き金が引かれ、狙撃を行うもの。
ウッソはカミオン隊のクルーと一緒に、罠を仕掛ける手伝いをしています。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
シャクティは、自分たちが育ったカサレリアの森を焼いてしまうかもしれないと感じています。ウッソはその手助けをしている。シャクティは、災いをもたらすカミオン隊に、一刻も早く、カサレリアを離れて欲しと思っています。
「森が燃えちゃう。」(シャクティ)
「森は燃えちゃうかもしれないけど、カミオンを追いかけて逃げるんだ。」(ウッソ)
「あの人達がきたから…。」(シャクティ)
「今はそんなこと言ってる時じゃないだろ。そうしてくれないとどうしようもないんだ。そっちだから行くんだよ。僕を困らせないでよ。僕はカミオンを逃げられるようにする。」(ウッソ)
ウッソの言動は、困ったシャクティをいさめる親のようです。自分が育った森が焼かれるのを半ば受け入れるような発言をするウッソ。今までの惨状を見てきたウッソに何があったのか、疑問を抱かずにはいられません。
ウッソの矛盾した行動には理由があるのです。
それは、「カテジナに良いところを見せて褒めてもらいたいからです。」
カミオン隊を襲撃したベスパのサバト隊は多勢です。ウッソはシャッコーで出撃します。
カテジナが、ウッソに心配する眼差しを向けます。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
「カテジナさん、あの顔、褒めてくれてない。怖がってもいないけど。何なんです…。そうか。」
カテジナは、若い(というよりは幼い)ウッソが戦いに出ることを良しとはしていない。
それは、マーベットの言動にもあらわれています。
「ウッソくん、やめなさい。2度も3度もラッキーな偶然が起こるものじゃないんだから。」(マーベット)
それを理解できないウッソは、カミオンの荷台にガトリングガンを見つけます。ウッソは、強力な武器を持ち出すことでカテジナを安心させようとします。
この行為を間近に見ていたシャクティは戸惑います。シャクティの視点から何カットにも分けて丁寧に描写されています。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
ウッソが恐ろしいことをしている。
その想いは「ウッソ!」という一言に込められています。
クロノクル、屈辱的なサバト隊への編入
ラゲーン基地に帰投したクロノクルは、気まずい立場にあります。ベスパのテスト機シャッコーを無傷で奪われ、そのためにガリー少尉が負傷したからです。
シャッコーを取り戻したいクロノクルは、デプレ大尉からサバト少尉の指揮下に入るよう提案されます。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
不服の表情をみせるクロノクル。下官の指揮下に入ることは、女王の弟としては複雑な心境でしょう。
デプレ大尉の「いろいろな体験は貴公の将来のためにもなる」という助言を受け入れ、指揮下に入ることを承諾します。
サバト少尉から『お坊ちゃん』と見下されるクロノクル。
「サバト。私に強がってみせたのは伊達だったのか。ん?」
サバトが交戦しているシャッコーが、未だ健在であるのを目撃したときのセリフです。
ミノフスキー粒子が散布されている状況下なので、サバト本人には聞こえていませんが、クロノクルがサバトを挑発しています。
「あれだ、あれが出てきたおかげで私は!」
コアファイターと会敵したときのセリフ。鬱積したクロノクルの感情が垣間見えます。
クロノクルとシャクティの出会い
クロノクルは、ウッソと遭遇したカサレリアの森を調査しているときに、シャクティと出会います。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
この時点では、二人は互いの素性に気づいていません。
クロノクルは、森の木々に張られているワイヤー(ベスパの攻撃に対抗するための仕掛け)について、シャクティに尋ねます。
咄嗟に「電話線」と答えるシャクティ。不法居住者であるためか、咄嗟のごまかしが得意です。
クロノクルにはそれが見抜けない。
『お坊ちゃん』気質のクロノクルは、すぐに人を信用してしまいます。
サバトの攻撃が開始されたことで事態は急変。
「少女、ワッパで山の上に逃げるんだ」
クロノクルの優しさが垣間見えます。
立場こそ敵ですが、シャクティへの接し方はまともな大人の対応でした。
もう一人の主役、ライオール・サバト少尉
このエピソードのもう一人の主役、ベスパのライオール・サバト少尉です。
サバトを演じる子安武人さんの素晴らしい演技も相まって、非常に印象深いキャラクターになっています。
戦友ガリーとの絆
病院で眠るガリーを気遣うサバト。
劇中で、サバトが何度も「ガリー」という名を口にします。
(ガリーが残したリガ・ミリティアの潜伏先に来たとき)「ガリーきたぞ。」
「戦友(ガリー)をやられ、クロノクルまで従わせたのだ!トドメは刺させてもらう!」
「ガリーの恨みを!」
戦友であるサバトとガリーの絆の強さが印象づけられています。
クロノクルとの対立による軋轢
女王の弟という肩書を持つクロノクルを認めていないサバトは、指揮下に入ったクロノクルに対して見下した態度をとります。
「隊長機サバト機へ。前方の川は間違いない。偵察を許可していただきたい。」(クロノクル)
「一度戦闘のあった場所には何もないというのがジンクスだ。」(サバト)
「相手が軍隊ならそうでありましょうが、この辺りに潜んでいるのは…。」(クロノクル)
「リガ・ミリティアは軍隊という噂だ!この辺りは焼き払っておくが、それまでの間の偵察ならやっていいぞ。中尉殿。」(サバト)
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
サバトとクロノクルが相容れない関係であることがわかるやり取りです。
「クロノクルのお坊ちゃんは手が遅いんだよ!」
サバトのクロノクルに対する評価を端的に表したセリフです。
クロノクルは、ベスパの兵士から見れば、『お坊ちゃん』なのです。
サバト隊の編成
リガ・ミリティア(カミオン隊)の討伐に出撃したサバト隊は、計4機のゾロで編成されています。
- ゾロ:1番機サバト
- ゾロ:2番機ジム
- ゾロ:3番機タミー?
- ゾロ:クロノクル機
MSの高い操縦技術
サバトは、ウッソのシャッコーと交戦中、森の中に仕掛けられた罠で機体が被弾しても動揺することなく、あと一歩のところまでウッソを追い詰めます。
ビームローターを射出して、目眩ましとして使うトリッキーな技を繰り出します。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
「F91」が、ビームシールド発生器を投擲する手法と似ています。
絵コンテが斧谷稔氏(富野監督)によるものなので、モビルスーツ戦の攻撃手法が多彩で見ごたえがあります。
ウッソとサバト、それは誰のための戦いだったのか? 勝敗を分けた要因は?
ウッソの戦う理由は、カテジナに褒められたいという思いです。
一方、サバトの戦う理由は、戦友であるガリーの恨みを晴らすことにあります。
技量と気迫で勝るサバトがウッソを追い詰めましたが、勝敗を決めた要因は何だったのでしょうか?
ウッソは緊張状態の中でも最後まで冷静な判断力を保ち、シャッコーの武装であるショルダーガンを準備し、的確に使用できたことが勝因です。
一方、サバトはテスト機であるシャッコーの性能を十分に理解していませんでした。
第3話「ウッソの戦い」で、サバトが「シャッコーの性能はこちらもよくわかっていないんだ」と焦っている描写があるためです。
モビルスーツについて
トップ・リムの活躍
ウッソを援護するためにコアファイターで出撃したマーベット。カミオン隊のロメロ爺さんたちは、火力で劣るコアファイターを強化するために、ハンガーとのドッキングを支援します。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
ハンガーとドッキングするコアファイター。
ミノフスキーフライトによって、コアファイターが空中に浮遊する演出があります。
Vガンダムの上半身で構成された戦闘機、「トップ・リム」です。
ビームライフルで武装が強化されたマーベット。
ベスパのジムが搭乗するゾロ2番機を圧倒します。
「ビームのゲインが違いすぎる!」
拡散したビームの粒子によって、ゾロ2番機の電気系統がブラックアウトし、行動不能に陥ります。
「トップ・リム」のビームライフルは、ゾロのビームローターを貫通する威力を持っています。
引用元:アニメ『機動戦士Vガンダム』第4話「戦いは誰のために」 ©創通・サンライズ
演出について
第4話の続きは、第1話「白いモビルスーツ」へ一旦戻ります。
ヴィクトリーに取り憑かれたウッソ
「Vガンダム」の第1話を視聴した方は、既にご存知のように、ウッソはクロノクルの攻撃を難なく振り切り、Vガンダムに乗り込むことになります。
第4話でウッソが人の命を奪ってしまったことに対する葛藤は描かれておらず、まるで何事もなかったかのようにVガンダムに乗り込むウッソの行動は不自然で矛盾しています。
その理由として、新作ガンダムのTVシリーズ第1話であるため、快活な主人公と活躍するガンダムを見せたかった大人の事情があったのではないでしょうか。
今エピソードの最後で、シャクティはこう語り、回想が終わります。
「モビルスーツで戦うのが怖いことだってウッソはわかったのよ。それなのに…。」
「このヴィクトリーっていうモビルスーツに。ウッソは取り憑かれてしまったのかもしれない。」
視聴者も『ヴィクトリーにウッソが取り憑かれたんだ』と納得するしかない力技です。
ウッソは、ガンダムに取り憑かれてしまったおもちゃを売りたい大人たちの被害者なのかもしれません。
最後に
斧谷稔氏(富野監督)が絵コンテを担当したエピソード。
ウッソの家の驚きの教育環境、困惑するシャクティ、クロノクルとサバトの軋轢、緊迫したMS戦闘、情報量が多く見応え十分の展開でした。
最後は、ウッソが戦闘で初めて人の命を奪ってしまう極めて重要なエピソードです。
この後の第1話では、まるで何事もなかったかのようにVガンダムに乗り込むウッソの行動が矛盾していますが、『ヴィクトリーにウッソは取り憑かれたんだ』と納得しましょう。それも、「Vガンダム」の魅力なのです。
これで、前代未聞の『1話と4話の入れ替え事件』から始まったVガンダムの導入部は完結し、ウッソとシャクティの苦難の旅が始まります。